院長ブログ

【台湾鉄道旅①】第4話 🌦雨を読んで経路変更

[ 公開日: 2025/12/28 ]

~客車特急で北上し 文化と食で締める~

 

🌧 旅程変更は前夜に決めた

本当はこの日、高雄から花蓮を経由して台北へ向かう「東海岸ルート」で、台湾をぐるりと回るつもりだった。
ところが台風接近。雨雲の動きと情報を見て、前夜のうちに決断した。東へは行かない。西へ回る。高雄から台北へ、いちばん確実なルートを取りにいく。

 

🚕 朝の高雄駅での列車変更

指定席の変更は、当日朝に高雄駅で行った。そしてここで運が良かった。
私が第一希望にしていた海線を通る「客車特急タイプの自強号」が取れたこと。
今日はもう、移動そのものが旅になる。

高雄駅は地下化が完成していて、巨大なターミナルとして落ち着いていた。駅弁売店はあるが朝はまだ開いていない。ただ駅構内のファミリーマートで、おにぎりと鶏肉、飲み物は十分に調達できた。朝食は、列車が動き出してからゆっくり食べればいい。

 

🚆 数少なくなった客車特急

台湾の「自強号」は長距離の看板列車だ。
今日乗るのは、機関車が先頭と最後尾につく客車列車の特急。客車らしい安定感があって、移動がそのまま休息になる。

一方で、台湾では新しいタイプの特急も主役になっている。
たとえば新自強号(EMU3000)は日立製作所の車両で、電車特急としての雰囲気が日本の特急電車にかなり近い。

同じ「特急」でも、客車と電車では旅の手触りが違う。今日はその違いを、体で味わう日になった。

車内は想像以上に混んでいて、高雄市の郊外をでるあたりで満員になり立ち客も出た。
それでも空気は静かで落ち着いている。人は多いのに騒がしくない。こういうところが台湾の鉄道は面白い。

 

🌊 海線の車窓 追分と海と風車

高雄を出た直後は雨で、窓に水滴が流れていた。
それが北上するにつれ、雨が止み、曇りになり、やがて空が明るくなる。空模様とともに、車窓が回復していく。

台湾の西海岸ルートには、山側を走る「山線」と、海沿いを行く「海線」の二つがある。
往路はメインルートの山線だったので、帰路はあえて時間のかかる海線を選んだ。遠回りのぶんだけ、旅の手触りが増える。

海線から山線へ分かれる節目のひとつが、追分(おいわけ)駅だ。
日本統治時代から残る、美しい総ヒノキ造りの駅舎で知られている。特急の車内から眺めるだけでも、その佇まいは強く目に残った。

日本にも北海道や長野に「追分」がある。
「道の分かれ目」という言葉の響きは、台湾の地でも同じように生きているらしい。

追分駅の隣には、連絡線でつながる成功駅がある。
台湾ではこの二駅を結ぶ切符を「追分―成功」と呼び、「分岐点から成功へ」という縁起物として親しまれている。硬券のセットは、受験や転機のお守りのような存在だ。

今回は降りられなかった。
けれど古い客車特急に揺られながら、「いつかあの駅で“成功への切符”を手に取ってみたい」――そんな想像をするのも、贅沢な移動の時間だった。

海線に入ると、ところどころで海の気配がぐっと近づく。
線路が海に最接近する区間は、特に良かった。左手に広がるのは台湾海峡。風車や赤い歩道橋が、車窓のアクセントになる。

速さだけが正義ではなくなる景色が、そこにはちゃんとある。

 

🍱 車内販売の駅弁

そして海線を走っている途中、思いがけない出来事があった。
車内販売が来たのだ。駅弁が買える。

正直、事前には分からなかった。
本当は台北に着いてから昼食のつもりだったが、これは買ってしまう。早い昼食に変更だ。

排骨弁当。大きな排骨、煮卵、とうもろこし、青菜、豆干など。
温かいまま手渡されると、見た目以上に嬉しい。
食べてみると、想像以上にちゃんと美味しい。派手ではないが、しっかりとした満足感がある。
「鉄道の中で休めた」と感じたのは、この弁当の力も大きい。

 

 

🏙 台北駅前ホテルに荷物を預ける

昼前に台北駅へ着いた。大規模なターミナルで、こちらも地下化されている。
長距離移動だったのに、不思議と疲れは少ない。むしろ整った。客車列車の安定感は、こういうところに出る。

宿は台北駅正面のシーザーパークホテル台北。
超豪華というより「駅前にどっしり構える立派なホテル」という感じで、日本人客も多い。フロントは日本語対応がしっかりしていて、こういう安心感は大きい。
部屋の準備はまだだったので、荷物だけ預けて外へ出た。

 

🖼 故宮博物院は必見ルートを効率よく回る

午後は国立故宮博物院(こきゅうはくぶついん)へ。
午後の訪問だったが、思ったより空いていた。これが本当にありがたかった。

展示は膨大だ。全部は無理。
そこで「必見ルート(約100分)」を参考に、迷いを減らして進む。

翠玉白菜(すいぎょくはくさい)は、代表作の大きいほうが貸し出し中で不在だった。
けれど小ぶりの白菜は見ることができた。

肉形石(にくがたいし)は混雑が少なく、至近距離でじっくり眺められ、写真も撮れた。
近くで見るほど「本物以上の本物の角煮」にしか見えない。

全部を網羅したわけではない。
でも、短い時間の中で「ここは押さえた」と思える満足感がある。
日本人観光客が多いのも印象的だった。

 

🌇 台北101は待ち時間なし 夕陽から夜景へ

夕方は台北101へ。MRT(地下鉄)で移動する。
チケットは待ち時間がなく買えた。しかも通常の89階の展望台だけではなく、最上階101階にも行けるVIPチケット。ほとんど止まらずにエレベーターでの乗ることができ本当にラッキーだった。

最上階101階展望台で見たのは、夕陽から夜景へ切り替わる瞬間だ。
空の色がゆっくり変わり、街の光が次々と灯っていく。旅の時間が「昼」から「夜」へ移る、その境目を眺めている感じがする。

また、91階では屋外に出ることができたがすごい風。思わず「恐風」と口に出た。強風と恐怖。自分で言って自分で笑う。このくらいの軽口が出るときは、たいてい旅がうまくいっている。

 

🍴 欣葉で食べたいものを全部頼む そして打包

夜は老舗の台湾料理、欣葉(しんいえ)へ。

空心菜の炒め物、茄子の炒め物、魯肉飯、春巻き、蝦餃子、蛤と生姜の清湯スープ、杏仁豆腐。
ウーロン茶、台湾ビール。
並べると、文字だけで満腹になる。

そして予定どおり、余る。
ここは「頼み間違えた」のではない。たくさん種類を食べたかった。
余るのも織り込み済みだ。

ところで、台湾では食べ切れなかったものは、打包(だーばお)という文化がある。
持ち帰れるように容器に詰めてもらうことができるのだ。
台湾ではごく普通であり、店員さんにひと言伝えるだけで手際よく用意してくれる。合理的で無駄がない。当然、私は「打包」をお願いした。

会計はNT$1,800(≒9,000円)。台湾料理としては高級だが、その分きちんと満足できた。
翌朝、あの持ち帰りが効いてくる。

 

🌿 ひとこと

雨に翻弄された一日ではない。
雨を読んで組み替えた一日だった。

東海岸ルートをやめて西へ回った判断は、結果として正しかった。
この夜、東のルートで列車の脱線事故があったと知った。
知らずに突っ込んでいたら、旅は別の形になっていたかもしれない。

さらに花蓮の洪水のことは、帰国後に知った。

鉄道の中で休み、文化を浴び、景色で締めて、食で余韻を残す。
旅の芯が、今日いちばんはっきりした気がする。

 

【参考リンク】

台鐵新自強號撞擊土堆出軌 山里至鹿野間交通中斷 – 客新聞 HakkaNews

台湾の洪水被害、なぜ甚大になったのか 「せき止め湖」決壊の警告はなかったと住民ら – BBCニュース

 

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