院長ブログ

【台湾鉄道旅②】第8話(最終回)🚌旅は最後の7分で終わらない

[ 公開日: 2026/2/22 ]

~台北から成田へ そして日常へ~

 

🧳 旅の終わりは、荷物の重さから始まる

旅の最終日は、だいたい静かだ。観光地の喧騒も、撮れ高のある景色も、もう十分に身体に入っている。代わりに残るのは、スーツケースの重さと、手元に増えた紙や小物の“確かな体積”である。

 

5:00、起床。昨夜の激闘の疲れを引きずることもなく、部屋でフルーツと豆乳の軽い朝食を摂り、体調を整える。七泊というのは、旅というより「一度、台北で生活した」に近い。毎日同じホテルに戻り、同じエリアの空気を吸い、同じ道を歩く。すると帰国日は、観光の終わりというより、生活を畳む作業の最終日になる。8:30、パッキングを終えた私は、住み慣れたホテルサンルート台北を後にした。

 

🚌 ホテル前から空港バスに乗れるという勝ち

ホテルサンルート台北の強さは、立地の良さを「移動の最後」で実感させてくるところにある。最終日に、重い荷物を抱えて地下鉄の階段や乗り換えをやりたくない。そういう気持ちを、こちらが言い出す前に片付けてくれる。

空港行きバスが「目の前から乗れる」。これが想像以上に効く。しかも、値段が妙に安い。運賃は91元(≒455円)。日本の空港アクセスに慣れていると、ここで一瞬、思考が止まる。8時50分発の1841番「桃園国際空港行き」に乗車。スーツケースはバスのトランクルームに預けられる。つまり、最終日の「持ち運び」や「気疲れ」を、まとめて減らしてくれるのだ。旅の終盤は、こういう“雑務の削減”が、そのまま幸福度になる。

📌 コラム1:医師の眼が見た「台湾の夜診文化」

滞在中に驚いたのは、台湾のクリニックが夜遅くまで灯りを灯していることだ。共働きが多い社会背景もあるだろうが、この「夜診(夜間診療)」の活発さは、街のバイタリティそのものに見える。地域に根ざし、生活者のリズムに医療が寄り添う。その灯りに、同業者として不思議な連帯感と、この国のタフさを感じずにはいられなかった。

  

✈️ 空港という儀式 旅を畳む時間

9:42、桃園国際空港に到着。空港に着くと、旅のテンションが一段下がる。「高揚が下がるというより、頭のスイッチが帰国モードに入る。出国の手続きというのは、旅を終わらせる儀式だ。ここで慌てると、最後が雑になる。私の旅は、最終盤ほど動きが綺麗になる。最後に崩れない。むしろ最後で「その人のスタイル」が出る。

 

🏛️ キャセイパシフィック航空ラウンジ 空港の中の別世界

チェックインと出国審査を済ませ、制限エリアへ入る。ここから先は空港というより「待合室の街」だ。そして、第1ターミナルのキャセイパシフィック航空ラウンジ。入った瞬間に思う。「成田とはえらい違い」。木と竹の使い方が上手い。広さがある。空港にありがちな硬さがなく、空港の中に“空港っぽくない場所”を本気で作ってある。

その象徴が、ヌードルバー(風味坊)だ。ラウンジ飯が“ビュッフェのついで”ではなく、ちゃんと一つの体験として設計されている。

第1ラウンド:カウンターで注文し、呼び出しベルで受け取る。濃厚な胡麻のコクが光る担々麺、台湾の魂・魯肉飯、そして熱々の蒸し餃子。

 

第2ラウンド:トマトの酸味がシャンパンに合うトマト牛肉麺、鮮やかな鶏肉シュウマイ、サクサク甘い揚げシログワイもち。

仕上げのドリンクは、シグネチャーのCathay Delight。キウイとココナッツミルク、ミントが「一区切り」をつけてくれる。天仁茗茶の茶葉を使ったタピオカミルクティーで、台湾らしさを最後にもう一度口にして、出発の時間を待った。

 

📌 コラム2:統一發票 捨てられないレシート台湾のレシートには、すべてに番号がついている。これが実は政府公認の「レシートくじ(統一發票)」だ。捨ててしまいがちな実務的な紙きれに、ささやかな夢と合理的な脱税防止策を乗せる。コンビニでも飲食店でも、手元に残るレシート全部にこの仕掛けがある。この「遊び心あるシステム」が、台湾という国をよりチャーミングに見せている。

 

✈️ 惜別と期待のテイクオフ

12:50発 キャセイパシフィックCX 450便、成田行き。機体はボーイング777(トリプルセブン)だ。長年、空の旅を支えてきた名機だが、フリートの刷新が進む中、この重厚なエンジン音を聴ける機会もそう長くはないかもしれない。一抹の寂しさを感じつつ、台湾を後にする。フライトは追い風(ジェット気流)の影響を受け、iPadで台湾のガイドブックを読み終わる前に、成田へと着陸してしまった。

 

🚆 成田エクスプレス 最後の7分

ここから先が、私の旅のスタイルを象徴する場面になる。入国手続きを終えると、成田エクスプレスの出発まで、わずか7分。

歩きスマホはしない。まず立ち止まり、必要な操作を短時間で終える。えきねっとで座席を確保する。そこからは最短ルートでJRの改札へ。重い荷物はあるが、慌てない。ホームに着くとちょうど列車が入ってきた。あとは車内へ滑り込むだけ。最後がきれいに決まると、旅全体が締まる。観光はもう終わっているのに、最後のこの数分が、旅の輪郭を決めてしまうのだから不思議だ。

 

📚 次の台湾:足りないから、また行く

今回、7泊8日でも全く足りないと確信した。街の速度、食の厚み、人の距離感。もう少し“分かる”側に寄りたい。だから本を買った。「ニーハオのその先へ」。あの一言を超えたところに、次の台湾がある気がする。
その本は、まだ机の上に置かれたままだ。次は観光地を増やすだけではなく、言葉と観察を増やしたい。旅は回数を重ねるほど、行き先ではなく、自分の解像度が変わっていく。

 

🌿 旅の締め:記録として残す理由

旅は、終わった瞬間から消えていく。だから記録する。読者のためというより、将来の自分のために。この最終日の静けさと、最後の移動の制御力は、次の旅の自分を助ける。

全部が、今回の旅の輪郭を作っている。台湾は、また行く。次は、今回の続きを回収しに行く。

 
 

旅する耳鼻科医ブログ