院長ブログ

昔の子どもは花粉症が少なかった?腸内細菌の話

[ 公開日: 2026/2/17 ]

~アレルギーに負けない体を作る「和食」と「お味噌」の力~

「最近、お子さんの鼻炎がなかなか治らない」 「自分たちの世代より、今の子どもの方がアレルギーが重い気がする……」

診察室で親御さんとお話ししていると、こうした切実な声をよく耳にします。実は最新の研究において、アレルギー性鼻炎(花粉やダニ)、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患があるお子さんは、そうでない子に比べて「腸内細菌の種類(多様性)」が少ないということが明らかになってきました。

鼻の粘膜の健康は、実はお腹の中の環境と深くつながっているのです。

 

1. まずは知る:お腹の中の「菌の森」と免疫のブレーキ

私たちの腸内には、100兆個もの菌が住んでいます。

実は、腸内細菌の種類が豊富だと、体の中に「制御性T細胞(Treg:ティーレグ)」という、免疫の暴走を抑えるブレーキ役**がしっかりと育ちます。

豆知識: この「制御性T細胞」を発見されたのは、日本の坂口志文先生です。アレルギー治療に革命をもたらす発見として、昨年2025年にノーベル生理学・医学賞を受賞されました。

お腹の菌が少ないと、この「ブレーキ」がうまく働かず、花粉やダニに対して免疫が暴走(アレルギー反応)しやすくなってしまうのです。

 

2. なぜ「昔の子ども」には花粉症が少なかったの?

その鍵を握るのは、日本人が古来続けてきた「和食」のスタイルです。

食物繊維は、腸内細菌にとっての「最高のご馳走」です。多様なエサ(食物繊維)を食べることで、お腹の菌の種類も増えていきます。現代の子どもたちは、この「エサ不足」によって、菌の多様性が失われやすくなっていると考えられています。

 

3. 今日からできる「最強の菌活」:本物のお味噌を選ぼう

「和食に変えるのは大変そう」という方は、まず**毎日の「お味噌汁」**を見直してみませんか?

お味噌は、菌を送り込み、さらに菌を育てる最高のパートナーです。選ぶポイントは、ラベルの裏側にあります。

せっかく摂るなら、多様な菌が生きたまま届く「本物のお味噌」を選んでみてください。そこにわかめやきのこを入れれば、それだけでお子さんのための「天然の免疫安定剤」になります。

 

4. 「5歳」を過ぎても、お手入れ次第で体は変わる

腸内細菌は3〜5歳ごろまでに大人と同じような構成になると言われています。そのため、幼少期の食生活を整えることがアレルギー予防に役立つ可能性があります。

ですが、「もううちは5歳を過ぎているから手遅れ……」と不安になる必要はありません。

腸内環境は庭の土壌と同じで、いつからでもお手入れが可能です。根気よく「菌が喜ぶ食事」を続けることで、眠っていた免疫のブレーキ役を呼び覚まし、症状を和らげていくことは十分に可能です。

 

結び:根本から健やかな毎日を

耳鼻咽喉科として、お薬で今の辛い症状を抑えることはもちろん大切にしています。ですが、私の願いは、お子さんたちが将来にわたってアレルギーに振り回されない「強い体」を手に入れることです。

鼻の処置だけでなく、こうした内側からの体質改善についても、診察室でお気軽にご相談ください。宮前平・鷺沼・宮崎台の皆さんの健康を、お鼻とお腹の両面からサポートしていきたいと考えています。

 

※本記事の内容は、山梨大学の研究チームが小学2年生857人を対象に行い、2024年に欧州アレルギー学会誌「Allergy」に掲載された研究をもとにしています(腸内細菌と鼻炎の重症度との関連を示唆)。

 
 

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