【院長の休日・奥出雲の旅】第1話🚆サンライズ出雲で夏の冒険
[ 公開日: 2025/8/8 ]
三連休の夜、東京駅のホームに立つと、ふと胸が高鳴る──。
今回の旅の目的は、ローカル線を乗り継ぎながら「日本の夏」を五感で味わうこと。名画に出会い、無人の鉄路を行き、奥出雲の宿に泊まり、秘境駅から山間を抜けて広島へ。そして最後は、平和を祈る場所へ足を運ぶ。
非日常の中で、心が動く瞬間にいくつも出会いたい。そんな思いで組み上げた、2泊3日の一人旅です。
そのスタートを飾るのは、夜行寝台特急「サンライズ出雲号」。東京〜出雲市間を12時間かけて走る、日本で唯一の定期寝台列車です。かつてはブルートレインが日本中を走っていましたが、現在このサンライズだけがその系譜を受け継いでいます。

2025年7月19日(土)、世の中は三連休の始まり。
とはいえ私は、いつも通り土曜は17時過ぎまで診療をし、仕事を終えた後、夜の東京駅へ向かった。
普段は日帰り旅行ばかりですが、月曜が祝日ということで、今回は珍しく“宿泊あり”の一人旅です。
行き先は山陰・奥出雲──。

今回の個室は、10号車2番「ソロ・上段」。やや狭い個室ですが、秘密基地のようなワクワク感があり、一部のファンの間では人気の部屋です。進行右側なので、早朝に姫路城を見ることができます。
入線後、荷物を個室に置き、シャワーカード売り場の列に並びました。列はホームの先まで続き、私の後ろには小学生くらいの男の子。
「シャワーカード、買えますかねえ?」——不安げな声で話しかけてきます。横浜駅までの「のびのびシート」(寝台より安価な指定席)で乗っているのだと教えてくれました。
結局、この夜は私も彼もシャワーカードを手にできず。
「明日また乗って、再チャレンジします」と、小さく会釈して去っていきました。
ほんの数分の出来事でしたが、旅の幕開けにふっと灯がともったような気がしました。
土用の丑の日ということもあり、鰻弁当を用意し、旅の始まりを祝うスパークリングワインの銘柄は、なんとその名も「サンライズ」。旅のスタートにふさわしい一本でした。


車内で荷解きを済ませ、個室の静かな空間で乾杯。
発車のベルとともに、東京の街の灯が、流れるように遠ざかっていく──そんな瞬間に、旅の実感がふっと訪れます。
列車はやがて都会の喧騒を離れ、静かな東海道線を走り抜けていきます。
個室の明かりを落とし、カーテンを開けて眺める夜の風景は、まるで映画のワンシーンのよう。
揺れる列車に身を任せながら、心は少しずつ、日常から解き放たれていきました。
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(予告)
●院長の休日・奥出雲の旅
第2話|足立美術館と木次線の異変
安来(やすぎ)駅でサンライズ出雲号を下車し、足立美術館を訪問。日本一の庭園と横山大観などの美術鑑賞、抹茶体験や島根和牛ビーフカレーのランチを楽しむ。
その後、木次線の運休情報を安来駅で知る。宍道駅に到着するも列車は運休のまま。果たして・・・
第3話|貸切列車で行く秘境の駅
第4話|静かな駅から始まる木次線の朝
第5話|時速25kmの鉄路をゆく芸備線
第6話(最終話)|広島で平和を想い、旅を締めくくる