院長ブログ

【台湾鉄道旅②】第4話🩹 足の親指が旅のリズムを変えた日

[ 公開日: 2026/1/14 ]

~無理をせず、近場の朝食と名店テイクアウトで立て直す~

 

⚠️ 旅の朝は、まず「足の状態」から始まった

2025年12月28日、台湾旅4日目。私の拠点はホテルサンルート台北だ。窓の外の台北はいつも通りに動いているのに、私の身体だけが昨日までの勢いで前に進めない。理由は一つ、右足の親指だった。

前夜、台北でマッサージを受けた。そのときの強い圧で、爪が皮膚に食い込んだ――そこから先は想像以上に早い。炎症が一気に進み、化膿し、激痛になった。じっとしていても拍動するように痛む。これは「歩けば何とかなる」類ではない、と直感で分かった。

しかも年末の日曜日。日本と同じで、ふつうの医療機関は動きにくい日だ。旅先でこういう状況になると、気持ちも一緒に焦る。けれど、今日ここで無理をすると、今日だけではなく残りの日程が全部崩れる。その感覚もまた、はっきりあった。

 

【注意】
今回の対応は私が医師として判断した例外的なものです。真似はせず、旅先で異変があれば現地の医療機関へ相談してください。

 

医師である私は、薬局で器具を調達し、自ら膿を出して圧を抜く処置を行った。幸い痛みは軽くなり、「悪化の連鎖」は食い止められた感触があった。ただし油断は禁物。痛みも赤みもまだ強い。抗生剤軟膏を塗り、しっかり養生する。今日は、治すことも旅の一部だと割り切ることにした。

 

🌫️ 予定変更は敗北ではなく、今日は立て直す日

旅の面白さは観光地の羅列より、むしろ「判断」にある。しかもその判断は、きれい事ではなく身体の声で決まる。今日はまさにそれだった。

歩けないなら、歩かない前提で組み立てる。遠くへ行くことをやめる代わりに、近場で“台北らしさ”を拾う。そして今回は7連泊。拠点が変わらない強みが、こういう日に本当に効いてくる。移動もパッキングもない。最悪、すぐ部屋に戻れば立て直せる。今日は徹底的に「崩さず立て直す日」にする、と決めた。

 

🥟 朝食は近くのローカルで温かく整える

こういう時に助かるのが台湾の朝食文化だと思う。派手な場所に行かなくても、町の中に「朝のための店」が当たり前のようにある。温かいものを、無理なく、短時間で。しかもちゃんと美味しい。

選んだのはホテル近くの蒸しパン専門店「巧味包子饅頭專賣店」。観光客向けというより、地元の生活の一部としてそこにある店だ。


私が選んだのは、この3つ。


黑糖紅豆包(22元(≒110円))
見た目は日本の“あんまん”に近いが、甘さの質が少し違う。黒糖の香りがふわっと立ち、強く主張しすぎない甘さで、朝にちょうどいい。


豆漿(20元(≒100円))
台湾の朝の定番。豆のコクがありつつ、さらりと口の中を整えてくれる。今日はこれが欲しかった。

竹筍肉包(25元(≒130円))
甘い包子だけで終わらせないための“塩”担当。筍の食感が入るだけで、口の中のリズムが変わる。

「甘い・飲む・しょっぱい」の完璧な三角形。体調が万全でない時こそ、こうした温かい食事が心身を整えてくれる。

 

🛏️ 午前は外へ行かないことで旅を守る

朝食を終えた時点で、私はもう一度「今日は欲張らない」と確認した。本当は行きたい場所はいくらでもある。台北は歩けば歩くほど面白い。けれど、今日はそれをやらない。足の状態はまださほどよくなっていない。旅先で部屋にいる時間は、以前の私なら「もったいない」と感じていたかもしれない。

 

📝 午前から夜まで 今日の本題は書く

朝食後は、方針どおり基本はホテル。目的は一つ。9月の旅ブログ【台湾鉄道旅①】を、第3話から最終話まで書き上げることだった。

旅先でブログを書くのは、観光より実は大変。記憶を引っ張り出して順番を整え、言葉の温度を揃える。特に「自分のため」ではなく「読者に届く文章」にする作業は集中力を削る。けれど、旅先でこういう時間が取れるのは、むしろ贅沢だとも思う。今日は、観光で埋める日ではなく、言葉で定着させる日だ。

🍱 昼食の買い出し 黄記魯肉飯へ

昼はホテル近くで済ませる。動かない日のルールに従って、行動半径はホテル周辺だけ。それでも「適当なもの」では終わらせたくない。そこで選んだのが黄記魯肉飯だった。

この店は今日いきなり見つけたわけではない。初日、夜市へ向かう途中の横道で「なんでこんな所で並んでるんだ」と思う行列を見た。一昨日も同じようにまた目に入った。そして決定打は今日の15時30分。昼のピークが終わっているはずの時間帯に、弁当の行列ができている。夜市なら並んでいても不思議ではない。だが夜市へ向かう途中の横道は、本来は人がまっすぐ歩く場所だ。そこからわざわざ逸れて人が溜まっている。この違和感がずっと気になっていた。

この日のテイクアウトは三つ。
蹄膀便當:骨付き・皮まわりの“とろけ”系が主役で、甘辛いタレが白飯に勝つタイプ。
香菇赤肉:とろみスープに椎茸の香りが立って、疲れた日にじわっと効く。
燙青菜:濃い味の合間に挟む“口のリセット”。これがあると食べ切れる。

 

部屋に持ち帰って食べると、濃厚なのにくどくない。日本にはない味なのに、日本人の舌に合う。

食べながら知ったのは、黄記魯肉飯はミシュランのビブグルマン掲載店であること。15時30分で行列、という体験が後から“評価”で裏打ちされると、旅の納得感が一段増す。

ホテルから近く、注文の流れも把握した。旅先で「安心して通える店」が一つできた感覚がある。足が治っても、たぶんまた来る。

📝 午後から夜 再び書く

食べ終えてからも基本はホテル。今日の目的は「書く」だから、そこに戻る。

旅先で一日を文章に差し出すのは、少しもったいないようでいて、実は贅沢でもある。観光で埋める旅と、言葉で定着させる旅。今日は後者の日だ。そう割り切れると、気持ちが整っていく。そして夜。9月の台湾旅ブログを第3話から第5話まで書き上げ、投稿し終わったのが21時だった。

 

🌃 夜の外出 短距離で台湾を回収する

書き終えた瞬間、部屋の空気が変わる。頭の中を占領していた言葉が、ふっと静かになる。代わりに、外の灯りや人の声が「少しだけ来い」と言ってくるような感じがした。ここからが夜の短距離ミッション。長く歩かない。遠回りしない。でも台湾の夜の芯は回収する。そのために外へ出た。

 

🍢 屋台で臭豆腐

65台湾元(≒330円)。量は多くなくても、香りと塩気で「台湾の夜を食べた」実感が出る。昼は魯肉飯系をしっかり食べているから、夜は重くしない。この選択がちょうどよかった。

 

🍹 果物屋で木瓜牛奶と鳳梨釋迦

次に寄ったのは果物・果汁の店。看板に「現切水果」「乾淨衛生」とあり、その場の回転で回っている安心感がある。今日は作り置きがなかったようで、その場でミキサーを回して木瓜牛奶(パパイヤミルク)80台湾元(≒400円)を作ってくれた。出来たての一杯が、書き疲れた身体に効く。
そしてもう一つ、果物ケースの中で目を引いたのが、鳳梨釋迦(パイナップル釈迦)150台湾元(≒750円)。台湾で人気の「釈迦(釈迦頭)」系のフルーツで、割ると中はクリームみたいな白い果肉が詰まっていて、大きな黒い種が多めに入っている。食べ方は単純で、皮を外して果肉だけを食べ、種は食べない。名前の「鳳梨(パイナップル)」は、品種によってパイナップルのような爽やかな香りのニュアンスが出ることから来ているらしい。私は部屋に持ち帰って落ち着いたところで“答え合わせ”をすることにした。

 

🏪 最後はFamilyMart 夜の保険を取りに行く

屋台の勢いだけで終わらせず、部屋に戻ってからの自分を助ける一手を打つ。旅の疲れは、こういう小さな保険で変わる。

買ったのは二つ。
雞肉飯おにぎり:35台湾元(≒180円)
鼎王麻辣蛋:20台湾元(≒100円)

台湾らしい鶏肉飯をおにぎりで持ち帰るのもいいし、麻辣蛋の「味しみ系」も夜の締めとして強い。これらを抱えてホテルへ戻る。今日の一日は、また部屋の丸テーブルで閉じる。

 

🌿 ホテル帰還 丸テーブルが今日の編集後記になる

部屋に戻り、買ってきたものを並べる。昼は文章を書き、夜は短距離で台湾を回収し、最後はコンビニで締めを取る。豪快な移動はない。でも今日はこれでいい。

動けない日にも、ちゃんと旅はできる。むしろ、こういう一日の方があとから記憶に残ることがある。足の痛みは確かに予定を変えた。けれど、旅のリズムは消えなかった。形を変えて、続いていく。

 
 

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